かゆみ専門外来
こちらを読んでくださっているかたは、日々、かゆみに苦しんでいらっしゃるご本人でしょうか。それとも、ご家族や、大切なかたが、かゆみに苦しんでいらっしゃるのでしょうか。年間2万人以上の皮ふに悩みのある方々を診療し、私が気づいたことは、「かゆみは痛みよりつらい」ということでした。かゆみがあることで、常に体のどこかを触っていたり、朝起きると血だらけになっていたり、枕やシーツと首や耳がくっついていたり…このようなことを経験されてきたのでしょうか。
それならば、時には、かゆみがあるから生きることすらつらい、と思われたことがあったかと思います。
本当に、かゆみを抱えながら、生き抜いておられることは、毎日が努力だと思います。そのような中、ここを読んでくださり、ありがとうございます。
力を入れている治療
当院では、かゆみのある皮ふ疾患に対する治療に力を入れています。心からそのつらさに寄り添い、苦痛の解除へ全力を尽くします。
強いかゆみを及ぼす疾患の代表には、アトピー性皮膚炎が挙げられます。でも、そもそも、「アトピーっぽい」「アトピーのケがある」などと言われたまま、診断すらはっきりしていない方も多いと思います。かゆみを及ぼす皮ふ疾患はアトピー性皮膚炎以外にも、多々あります。
まずは、なぜかゆみが起きているのか、続いているのか、一緒に考えたいと思います。
皮ふには、必ずその方のストーリーが刻まれています。かきむしった痕から、どんな時にどれほどのかゆみがあるのか、伝わってきます。そのストーリーの引き金が少しでもわかれば、それは人生をまるっと変えるヒントとなります。
時に、人の人生を奪うほどのかゆみを及ぼす疾患は、保険診療でつるっとした肌色になるまで回復できる時代になりました。
そのために使う薬はごくごく最近我が国で承認・発売されたばかりですが、かゆみに苦しむ方々を見ない皮膚科診療の日はないからこそ、私は積極的に導入しています。2022年には、東京都港区において、その新薬の導入率が1位になりました。その経験の中では、大きな副作用を示した方はいらっしゃらなかったのですが、「くすり」を反対から読むと「りすく」となるように、薬には必ずリスクを伴うので、それぞれにどういった副作用があるか、どんなスピードで効果を示すか、どういった頻度で使っていくか、そういった特徴をお話してから、治療に踏み込みたいと思います。
基本の治療として、「外用・内服・光線」でつくる、「結び式 かゆみ治療の三角形」を用います。
- 01外用
これは保湿剤や、その上に外用する「炎症をおさえる薬」になります。こちらに関しては、ステロイドの入った外用剤のほか、ステロイドがまったく入っていない外用剤も選択肢にあり、目の前の皮ふの症状に併せて、そして何より患者さんのお気持ちに併せて、より適切な外用薬を一緒に選択してまいります。 - 02内服
症状に併せて、必要と考えられる作用をもつ飲み薬を選びます。かゆみを抑える飲み薬はいろんな種類があるのですが、残念ながらどれを飲んでも効果不足である場合もあります。この場合はかゆみに対するアプローチを注射などに変えるのですが、かゆくて「眠れない」という今すぐ対応したい苦痛に関しては、すっと眠りやすいお薬を選びます。 - 03光線療法
かゆみに対してストレートに効果を示す、中長波紫外線という光を照射する治療法です。簡単にいうと、太陽の光のいいところだけを集めたもので、照射するときに痛みはありません。正直なにも感じませんが、確実に照射後6時間程度たったころから、かゆみに対して効果を示します。当院においている光線の照射器は、世界最小・最軽量の照射器が1つと、三面鏡型で背中や全身一面に一気に照射できるものが1つになります。この光線療法ですが、私はとても好きなかゆみの治療法の1つです。痛みもなく、苦痛なく、ただかゆみにストレートに効果を示します。
かゆみを伴う乾燥した皮ふでは、かゆみを感じる神経が、皮ふの浅いところまで伸びてきていて、それで「敏感」肌になっていることがわかっています。光線療法の光をあてると、この伸びてきた神経を、本来の位置までひっこめることができるのです。
「結び式 かゆみ治療の三角形」を、一人一人の皮ふのストーリーに合わせてカスタマイズしたうえで、さらに強力な味方の注射薬や、飲み薬を併せていきます。いずれも保険適応です。
このあたりは、私の著書である「かゆみが痛みよりつらいあなたへ」で詳細を記載しております。当院受診を考えてくださっているかたは、ぜひお時間のある時にご一読いただけましたら幸いです。
医療機器紹介
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- UV治療器 TARNAB
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- ダブリン 7シリーズ 三面鏡型紫外線治療器 For front and back body